2017.08.18 | Life style
人の心を動かす7つのコミュニケーション戦略
こんにちは、kacikaです。
つい先日、任天堂からスプラトゥーン2が発売され、国内のみならず世界中で盛り上がっている様子を横目に、悶々としながら初代の方で遊んでいる私です。
さて、このように世間では次々と各メーカーから新しい商品が発表され、めまぐるしくモノや情報が溢れていく現代において、各企業はいかに商品を知ってもらうか、どうやったら買ってもらえるかということに日々悩まされています。
そこにはプランナーやマーケターといった、商品を買ってもらうために戦略を考えている人々がいるのですが、最近ではクリエイター側もある程度のマーケティング戦略について知っておくべきではないかと感じています。
そこで、マーケティングについて勉強していく中で、《手書きの戦略論 「人を動かす」7つのコミュニケーション戦略/磯部光毅(著)》という書籍がとてもわかりやすく、内容も充実していたため、ここで紹介すると同時に、自分にとっての備忘録としてまとめていきたいと思います。
現在、コミュニケーション戦略において、一般的に使われている戦略論は以下の7つとなっています。
[コミュニケーション戦略における7つの戦略論]
- 1.ポジショニング論 → 「違い」によって人を動かす
- 2.ブランド論 → 「らしさ」の記憶が人を動かす
- 3.アカウントプランニング論 → 「深層心理」が人を動かす
- 4.ダイレクト論 → 「反応」の喚起が人を動かす
- 5.IMC論 → 「接点」の統合が人を動かす
- 6.エンゲージメント論 → 「関与」が人を動かす
- 7.クチコミ論 → 情報の「人づて」が人を動かす
ではそれぞれの戦略論を、参考事例をまじえながら詳しくみていきます。
1.ポジショニング論
ポジショニングを一言でいえば「違い」によって人を動かす戦略論。文字通り「相対的な位置取り」によって他と差別化を図ることです。
もう少し詳しく定義すれば、「顧客ニーズを汲み取りながら、お客さんの頭の中で、競合と違った位置づけを得ること」。たとえば、「あのお店は安いけど味はそこそこ、比べてあっちのお店は高いけど抜群に美味しいよね」といったように。お客さんの頭の中で、競合との差別化を図り、競合とは違った位置どりを狙う手法です。
また、ポジショニング論を語る上で外せないのがポジショニングマップ。これは縦横2軸、4象限に分けたチャートに自ブランドと競合ブランドを置いて戦略を表現したものです。
ただし、競争の激しいこの時代、現在の市場における基本的な価値軸でポジショニングマップを作ろうと思っても、「ここを狙えばいける!」というおいしい穴が開いていることはほぼありません。
もっとも大切なことは、自社ブランドにとって有利に働く競争軸を「発見」すること。その際、メーカー目線ではなく、お客さん目線に立った意味のある軸を設定できるかが重要となります。
このように、新しい価値軸を打ち立てる方法を「カテゴリーメイク型」といい、既存の価値軸で競合よい優位に立つ方法を「オーバーテイク型」といいます。
【ポジショニング論の事例】
い・ろ・は・す/コカ・コーラ
他社製品と比べ、「エコ」でミネラルウォーターを選ぶという価値軸を設定し、瞬く間に大ヒット。
【ポジショニング論の強み】
- ・頭の中の位置づけなので、多様な「違い」の作り方が可能。
- ・お客さんの商品購買に直結する選択肢を提示できる。
- ・商品の特徴や機能ベネフィットにきちんと立脚している。
- ・広告などで訴求しやすい。
【ポジショニング論の弱み】
- ・市場が成熟し類似品が増えると「違い」の設定が困難になる。
- ・お客さんの関心が低いカテゴリーだと「違い」を訴求しても響かない。
2.ブランド論
ブランド論は、「らしさ」の記憶こそが人を動かすという考え方であり、現在のコミュニケーション戦略における最重要理論のひとつとなっています。
たとえば「このブランドの製品は頑丈で壊れなさそうだからこれを買おう」、「このブランドの洋服は前衛的でオシャレだから私も着たい!」といったように、ブランドに抱いているイメージが人の行動を促す場面は多々あります。
ブランド論とは、このようなブランドがもつ「らしさ」の記憶を、どうやってお客さんの頭の中に連想させるかということに着目した戦略論となります。
そもそも、人の記憶の連想構造はどうやってつくられているのか。
人間の記憶の仕組みは、「短期記憶」と「長期記憶」の2つから成り立っており、目や耳といった「感覚レジスター」に入ってきた情報の中で、特に注意が向けられたものだけがまず「短期記憶」に送り込ます。
ただし、この短期記憶はわずか15秒以内に入ってきた情報の90%以上を忘れてしまいます。そして残った一部だけが「長期記憶」へと転送され、貯蔵されるという仕組み。
では、短期記憶で忘れてしまう情報と、長期記憶へと転送される情報の違いは何でしょうか。それはすでに長期記憶に入っている知識によって「意味付け」されるかどうか、という点です。あるいは、短期記憶を何度も繰り返しているうちに自然に覚えてしまうこともあります。
長期記憶では、さらに「意味記憶」「エピソード記憶」「手続き記憶」の3つに分かれます。
意味記憶とは、概念など一般的な知識についての記憶。エピソード記憶とは、特定の時間的・空間的に関連した個人的な出来事、経験の記憶。手続き記憶とは、意識しなくても使うことができる、いわゆる「体が覚えている」状態のものを差します。
「ブランドはロジックとマジックでできている」といわれ、商品機能の足し算だけではなく、連鎖した記憶がひとつの塊になり、好意的な感情で包まれることでブランドとなります。
理屈だけではブランドはつくれないし、ときには飛躍したブランド表現だって必要。最終的には論理を超えて、「これなんか好きだなあ」と思わせなければいけません。
ブランド論を考え、戦略を立てるときに大切な点は以下の4つ。
- 1.固定的な「ブランド」から動的な「ブランディング」へ
時間が経つにつれブランドの鮮度の低下が起き、古びて見えてしまうため、ブランドの本質は守りつつ、常にアップデートしていく。 - 2.ブランドの中心はミッションとビジョン
ブランドミッションを持つことで社会における役割をはっきりさせ、ブランドビジョンをもつことでどこに向かっていけばいいのかを明確にする。 - 3.「体験」と「接点」の視点から見直す
ブランドの未来像を描けたら、どんな体験や顧客接点によってブランド像を実現できるかの仕組みを設計する。 - 4.ブランドパーソナリティをしっかり固める
ブランドの「人格」を決め、大切にする。
【ブランド論の事例】
Think small./フォルクスワーゲン
大きいものはいいことだという価値観を信じて疑わなかった当時のアメリカで、その時流に反して小さい車の価値を語り、ワーゲンを選ぶ人は「賢い」消費者だと主張。ブランドの持つ哲学を顧客の価値観と重ね合わせる、今でも色あせない広告。
【ブランド論の強み】
- ・お客さんの商品・サービスに対する「価値」「好意」「絆」を醸成できる。
- ・プレミアムな価格維持に貢献できる。
- ・長期的な反復購買を促すことができる。
【ブランド論の弱み】
- ・記憶や感情に関わるもので、効果を可視化し、数値化しづらい。
- ・長期記憶に残すことを主眼に置いているので、必ずしも即効性が高くない。
- ・直接的な購買喚起につながるとは限らない。
3.アカウントプランニング論
アカウントプランニング論とは、「深層心理」によって人を動かすアプローチを作る戦略論。消費者の行動に潜む心理を発見・理解し、広告開発プロセスに取り込む手法です。
たとえば、最新のiPhoneを買いたいとなった際、「便利だから欲しい」と思う表の心理の裏には、「これで周りと差をつけられる」といった深層心理が隠れているもの。アカウントプランニングではこの深層心理(インサイト)にあらわれる「心を動かすツボ」に重点をおいて広告の設計を行なっていきます。
では、なぜ深層心理が重要なのか。前提には、消費意欲の減退、類似商品の氾濫といった悩みに加え、消費者の広告への関心そのものがどんどん低下し、広告に対して懐疑的になったり、素直に信じてもらえないという課題認識がありました。そこで、購買を喚起する潜在的な動機づけに関心が向いていったというわけです。
また、アカウントプランニングでは最終的に1枚のペーパー、「クリエイティブブリーフ」に集約されます。クリエイティブブリーフとは、いわゆる広告の設計図であり、どんなコミュニケーションをつくるのか、その骨組みを示すためのものです。クリエイティブブリーフに必要な基本的要素は以下の8つ。
- ⅰ.広告の目的(何を達成するのか)
- ⅱ.ターゲット(誰に語りかけるか)
- ⅲ.現状(どう思われているか)
- ⅳ.将来像(どう変えたいか)
- ⅴ.コンシューマーインサイト(心を動かすツボは)
- ⅵ.プロポジション(何をメッセージするのか)
- ⅶ.信じられる理由(根拠は)
- ⅷ.トーン(どんな語り口、雰囲気で伝えるか)
クリエイティブブリーフを書く際に大切なのは、ただ各項目の穴埋めをするのではなく、それぞれをつないでいくと一つの戦略ストーリーになっているかどうかということ。このターゲットのこの深層心理をつくために、このメッセージを伝えることで、こんな将来像になって、こういう広告目的が達成されるんだ、と一本の線でつながり、ブリーフの作成者自身が「たとえばこんな感じ」とアウトプットイメージを描けるかどうかが大切です。
【アカウントプランニング論の事例】
Sorry, I Spent it on Myself/Harvey Nichols
イギリスの高級デパート「Harvey Nichols」が、クリスマスシーズンに向けて打ち出した「Sorry, I Spent it on Myself(ごめんね、自分のためにお金使っちゃった)」というキャンペーン。
これは、クリスマスプレゼントを買いにデパートに行くと、自分が欲しいものを見つけてしまい、「せっかくお金を使うなら、他人へのプレゼントではなく自分のために使いたい」という誰もが一度は感じたことのある気持ちをウィットに富んだ表現で描いています。
具体的な内容は、店舗とオンラインストアで数十円〜数百円のリーズナブルなギフトコレクションを発売。きれいなパッケージに包まれた中身は「つま楊枝」や「輪ゴム」など。予算のほとんどは自分の買い物に使って、他人へのギフトには代わりにこれを渡したらどうですか、というシャレになっています。
クリスマスプレゼントを買いに行った時の「ついつい自分へのプレゼントが欲しくなっちゃう」という深層心理が見事に表現された広告となっています。
【アカウントプランニング論の強み】
- ・消費者意識が反映された戦略およびクリエイティブが生まれやすい。
- ・インサイトは低関与の人、広告を信じない人の気持ちを動かす力がある。
- ・クリエイティブブリーフという1枚の設計図にまとめることで、戦略のブレをなくすことができる。
【アカウントプランニング論の弱み】
- ・インサイトは、その真偽や効果について定量的な評価が難しい。
- ・刺激 - 反応モデル、つまり「メッセージを伝えて、意識を変える」という考え方がベースなので、双方向のコミュニケーションには向かない。
4.ダイレクト論
ダイレクト論とは、「反応」の喚起が人を動かすと考える戦略論であり、お客さんの反応を獲得しながら関係性を深め、顧客生涯価値(LTV = Life Time Value)を高めていくことを目指す戦略論。現代のネットの運用型広告はこのダイレクト論がベースとなっています。
ダイレクト論では、「ダイレクトマーケティング」と「ダイレクトレスポンス広告」の2つのレイヤーから成り立ち、簡単に言えばダイレクトマーケティングを行うための顧客獲得手段がダイレクトレスポンス広告となります。
では具体的にダイレクトマーケティングはどのようにして行われているのか。基本的には、まず顧客を5つの段階に分けて考えるのが一般的です。
- ①潜在顧客
- ②見込客
- ③新規顧客
- ④リピート客
- ⑤ロイヤル客
①〜③までのフレームワークを「アクイジション(顧客獲得)フェーズ」、③〜⑤までを「リテンション(顧客維持)フェーズ」の大きく2つに分けられます。
目指すのは、「①潜在顧客」にレスポンス広告を打ち、効率良く多くの「②見込客」を集め、獲得した「③新規顧客」を再度注文してくれる「④リピート客」に引き上げ、最終的に「⑤ロイヤル客」にすること。その都度その都度でさまざまな施策を打って“ロイヤル化”させていき、顧客生涯価値を最大化するのがゴールです。(顧客生涯価値とは、ひとりの顧客が取引期間を通じて企業にもたらす利益のこと。)長期的な関係を築き、取引を継続してもらうことがもっとも重要であるという考え方で、広告費や無料サンプルセット代など、仮に顧客獲得の段階で赤字が出ても最終的に取り返せれば問題無いというスタンスで投資を行っていきます。
デジタルテクノロジーの進化により、ネットでの消費者行動や広告による費用対効果のデータがより緻密に収集・分析できる時代となった現代で、これからますます加速していく戦略論であると思います。
【ダイレクト論の事例】
ネスカフェアンバサダー/ネスレジャパン
まずは無料でコーヒーマシンを貸し出すことで一番最初のハードルを下げ、とりあえず使ってもらい、定期購入へとつないでいく。また、知人友人に紹介して行く事で豪華な商品がもらえるという、ダイレクトマーケティングに欠かせないリレーションシップ(顧客との関係性)を見事に構築した。
【ダイレクト論の強み】
- ・顕在顧客獲得に強く、売り上げに直結する。
- ・即効性がある。
- ・投資対効果が可視化できる。
- ・精密なターゲティングができる。
- ・複数の広告展開を同時に行える。
- ・PDCAを速く回せる。
※PDCA:Plan=計画 → Do=実行 → Check=評価 → Action=改善 を繰り返していく手法
【ダイレクト論の弱み】
- ・潜在客へのアプローチは不得手。お客さんを一定以上増やすことが課題。
- ・ネットの運用型広告は、テクノロジーに頼りすぎて人の気持ちを動かす視点が弱いという批判あり。
- ・効率を求めすぎるあまり短期的な視点に陥りやすい。
- ・比較が容易なネット上では、差別化が十分でないと価格競争になりやすい。
- ・記憶にアプローチしないので、価値づくり、ブランドづくりが難しい。
- ・一部の執拗に接触させて手法は、嫌悪も醸成してしまうリスクがある。
5.IMC論
IMCとは、統合マーケティングコミュニケーション(Integrated Marketing Communications)のこと。お客さんとの接点において、メッセージとメディアを複合的に用いるアプローチで、「接点」の統合が人を動かすという戦略論です。最近では「タッチポイントプランニング」とも言われています。
IMC論では、メディアを重ね合わせて、商品、サービスをより広くパワフルに浸透させる「送り手主導」の考え方ではなく、生活者・お客さんこそが中心にあるべきだという「受け手主導」の統合である点がポイントです。
できるだけコスト効率よく、できるだけ多くの人にメッセージを伝える広告メディア戦略ありきの捉え方ではなく、そもそも顧客とブランドが接触するあらゆる接点が重要であり、製品戦略、価格戦略、流通戦略までも含めたビジネスプロセス全体をコミュニケーション視点で統合的に設計すべきという考え方にのっとって戦略だてていきます。
さらに、お客さんがブランドとどのようにして接点を持つかを調べるために、2000年代後半から「カスタマージャーニーマップ」というモデルが登場しました。これは、お客さんが購買プロセスの途中にある接点(タッチポイント)でどのような体験をし、どのような心理的変化を起こすのかを可視化したマップです。各ステップを洗い出し、それぞれのタッチポイントごとの課題に対応したアプローチを企画する手法が一般的です。
その際に重要なのは、感情の流れを想定し、どうすれば心を動かすことができるか、というところ。また、ありがちな購買モデルを超えて、真にブランドとお客さんがよい関係を結ぶカスタマージャーニーをどうプロデュースしていくかを考えなければいけません。
【IMC論の事例】
Fit's/ロッテ
「噛むとフニャン」というキャッチコピーで大ヒットした商品。TVCM、PRイベント、ポスターやバナー広告、ウェブ、サンプリングなど、あらゆるタッチポイントでコミュニケーションを統合的に展開。またダンスコンテストを開催し、優勝者には100万円を贈呈するといったユニークなイベントも実施されており、10代のみならず幅広い層にリーチすることに成功した。
【IMC論の強み】
- ・複数接点、複数メッセージをつなげることでお客さんとの関係強化が可能。
- ・KPIなどの中間指標で効果が測れる。
※KPI = Key performance Indicator(重要業績評価指標)
【IMC論の弱み】
- ・接点づくりに偏重して、そこで具体的に何を伝え、どう気持ちを動かすかの視点が弱いという批判あり。
- ・接点を細かく分けすぎることで、発想や企画が小さくなりがち。
- ・KPIの運用次第で、数量化しやすいものに偏重したり、手段が目的化する危険性も。
6.エンゲージメント論
エンゲージメントとは、お客さんが能動的に「関与」することで生まれる、心理的なつながりのことを差します。ポイントは能動的な関与という点。たとえばウェブ動画を再生する、いいね!する、リツイートするなど、ささいな形であってもなんらかの能動的なアクションを伴った絆や関係性です。
エンゲージメントが注目された背景には、膨大な情報が飛び交う現代において、人々は意識的・無意識的に情報をスルー(=無視)し、広告はますます生活者にとって「うざい情報」とすら思われるようになってしまった状況があります。そこで、広告が送り手から情報を伝えて、受け手は受動的に見るものだとすれば、エンゲージメントは、コンテンツやプラットフォームの形で情報を届け、受け手による自発的な関与を引き出す手法となります。
言いたいこと(広告)をそのまま言うことでスルーされてしまうなら、受け手が自発的に興味を持つ、行動を起こしたくなる形にして届けようじゃないか、ということです。
エンゲージメントは「キャンペーンセントリック型」と「オールウェイズオン型」の2つに大きく分かれます。
キャンペーンセントリック型では、短期間に多くの人が関与・参加したくなるもので、ショートムービー、アプリケーション、ゲーム、イベントなどでよく表現されます。
対してオールウェイズオン型では、お客さんに常に寄り添い、中長期的に関与を深めるもの。SNSやオウンドメディアなどを活用することが多いです。
一方通行のメッセージではなく、受け手の関与を引き出すエンゲージメントは、情報過多の時代において必須のアプローチであり、今後もどんどん進化していく戦略論であると予想されます。
【エンゲージメント論の事例】
Subservient Chicken(従順なチキン)/Burger King
さまざまな単語を入力して指示すると、画面上のチキンがその命令に従って動く、インタラクティブなゲーム。メニューが自由にアレンジできるバーガーキングの特徴を活かした、エンゲージメント領域では伝説のキャンペーンのひとつ。
【IMC論の強み】
- ・広くゆるい関与は、情報伝達を容易にし、“なんとなく買い”などに寄与する。
- ・深い関与はクチコミの発信源になり、ファンの熱い応援につながる。
- ・オールウェイズオン型は、お客さんの時間軸に合わせることができる。
- ・比較的予算がかからない。
【IMC論の弱み】
- ・即効性がない。
- ・継続的活動なので手間がかかることが多い。
- ・効果の数値化が難しい。
7.クチコミ論
クチコミ論は、名前のとおりに、情報の「人づて」が人を動かすという戦略論。
Facebook、Twitter、LINEをはじめ、様々なソーシャルメディアが登場した昨今では、従来までの「クチコミ」と比べ、「情報の量」「情報の信頼性」「情報に接触する順番」において劇的な変化をもたらしました。とくに情報の信頼性という面において、企業から直接発せられた情報よりも、「人」を介して接触した情報の方が信頼できるという、お客さんの意識の変化が大きくあります。こうなってくると企業側も、クチコミを自然発生に任せるのではなく、マーケティングに活かせる戦略として取り組まざるを得なくなってきた、という状況なわけです。
クチコミの発信者には以下の代表的な6タイプに分かれます。
- 1.ロイヤルカスタマー
習慣的購買をする人、ブランドの魅力を感じている人。 - 2.エヴァンジェリスト
そのブランドを広めることが社会にとっていいことだと信じているほど熱狂的な信奉者。強いブランドは必ずといっていいほどエヴァンジェリスト社員を抱えている。 - 3.アドボケーツ
ブランド、プロダクトの情報を発信・推奨してくれる一般の人々。語りたいという気持ちが強い人。 - 4.インフルエンサー
セレブ、著名人など高いカテゴリー知識を持つ専門家。ただし最近ではそういうスーパーインフルエンサーではなく、一般のインフルエンサーの方が拡散に寄与していると注目されている。 - 5.イノベーター
新商品をいち早く購買し、その経験を発信して他者に影響を与える人。 - 6.アンバサダー
企業から(報酬付きで)任命され、魅力を伝達する人。
では、クチコミを通じて何を目指すのか。それは「ファンづくり」と「ムーブメントづくり」の大きく2つの目的に分かれます。
ファンづくりでは、「人は友人・知人、とくにファンからの言葉でしか動かない」という考えのもとに、そのブランドのファンをベースにオーガニックに生まれる情報の拡散を狙うやり方。
対してムーブメントづくりでは、話題化を図ることでそのブランドの勢いや活力、盛り上がりやメジャー感をつくることを狙うやり方です。最近巷でよく聞く「バズマーケティング」がこれにあたります。SNSで拡散されやすいネタは、具体的に役立つ「機能的」なネタ、自己顕示欲をくすぐる「社会的」なネタ、人を揺さぶる「感情的」なネタ、といった3つの視点によって決まります。
【クチコミ論の事例】
Balls/Sony Bravia
サンフランシスコの坂道を25万個のカラーボールが転がることで、圧倒的な映像美を表現した広告。イギリスのマンチェスター・ユナイテッドのビッグゲームの間に放送され、その強いインパクトから瞬く間に世界中に拡散されていった。
【クチコミ論の強み】
- ・情報の量、信頼性、接触する順番の点で、他のメディアを凌駕し始めている。
- ・低予算で広く拡散する可能性がある。
【クチコミ論の弱み】
- ・情報の自走が基本なので、アンコントローラブルな部分が多い。
- ・戦略論としてまだまだ確率していない。
- ・効果測定もまだ発展途上。
まとめ
以上の7つの戦略論、どれが正しく、どれが重要だということはなく、7つ全てが正しく、また重要な戦略論となっています。
もっとも大切なことは、7つの戦略論それぞれの強みと弱みを理解し、それらを組み合わせて統合的に「人を動かす」戦略をたてていかなければいけないこと。
組み合わせ方には「アウトサイドイン型」と、「インサイドアウト型」の大きく2つに分けられます。
「アウトサイドイン型」は「外から内」へという考え方であり、広告で広く投網をかけて、できるだけ遠くからお客さんを引き込み、最後は取りこぼしなく販売に落とし込むといった、マスブランディングを出発点とするタイプ。
一方、「インサイドアウト型」は反対に「内から外へ」という考え方です。購買に近いお客さんをできるだけ効率よく獲得し、獲得効率などを見ながら徐々にターゲットを広げていく、運用広告型を出発点とするタイプです。
ただし、この2つの考え方はあくまで大きな方向性のベースというだけなので、一つ一つのブランドによって最適な戦略論の組み合わせ方を考えていくことが大切です。
今後、インターネットとデジタルテクノロジーの革新によって、行動データ、モノ、広告、販売、テレビやネット、人とコンピューターなど、さまざまな領域において境目がなくなり「シームレス化」が進んでいくと予想されます。
お客さんとの継ぎ目のない「全接点化」と、その裏側にある「行動データ把握」は当たり前になっていく中、「人を動かす」ためにはどうしたらいいのか、ますます戦略アイデアが重要になってきそうです。
さて、以上がコミュニケーション戦略における7つの戦略論でした。いかがでしたでしょうか。
紹介した内容はまだまだほんの一部でしかありませんので、もっと詳しく知りたいという方はぜひ実際に手にとって読んでみてくださいね!